「現場実験から把握する地下水の実流速(その2)」廃炉地盤工学委員会講習会

 本講習会は、福島第一原子力発電所の廃止措置において、「現状から廃止措置までの長期間の地下水環境・作業環境の状況調査と将来予測」のために、原子力技術者と協働できる新しい地盤工学技術者の育成プログラムとして企画された「廃炉地盤工学委員会」の活動の一環として実施された。

 一般に地盤工学では、地下水は流量が問題になることが多いため、ダルシーの法則に従った地下水解析を教えている。この方法は、地盤を多孔質体と仮定し、全断面でどれだけの流量があるかを算定するため、透水係数というパラメータでその特性を表現したものである。しかし、実際には、地下水は土粒子の間隙を縫うように流れるため、透水係数から算定された流速(ダルシー流速)より、実際の流速(実流速)は早くなり、地盤の間隙率(有効間隙率)や動水勾配も影響すると考えられる。従って、地下水による汚染物質等の広がりを把握するためには、この実流速が重要となる。

 本講習会は、基本的に2017年度と同様、午前の座学と午後の現場実験を組合わせて実施した。座学では問題点の概要に加えて、現場ボーリング孔を用いた実験の目的と内容を説明した。現場実験では水理試験(揚水試験)を行い、この状態で温度検層とトレーサー試験を実施した。具体には現場の対象土層の流速を流向流速計で確認し、温度検層によって水みちの特定を行った後トレーサー試験によって平均実流速を把握した。これは、揚水井戸で対象土層に動水勾配をつけた一種の加速試験である。そのため、測定結果からだけでは実流速は評価できないため、モデル解析を併用して、結果の解釈を行った。

 以上の講習を通じて、受講者は、実際の計測の問題点とその解決策を把握し、今後の現場実測のあり方を理論と実験の両面から学習した。

■日時 :2018年10月19日(金)9:00~16:30
■場所 :日本大学文理学部 百周年記念館敷地内
■参加人数 :53名
■主催 :地盤工学会 廃炉地盤工学委員会
■後援 :日本地下水学会
■プログラム :
  9:00~9:10 挨拶
  9:10~10:00 地盤の水理調査計画の考え方
  10:00~11:00 現場実習:トレーサー試験(投入),温度検層試験
  11:00~12:00 温度検層,流向流速計測とその結果評価
  [休憩]
  13:00~14:00 トレーサー試験とその結果評価
  14:00~15:00 トレーサー試験の理論解析
  15:00~16:00 現場実習:トレーサー試験(途中結果)
  16:00~16:30 質疑応答

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